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Case 36

■ ダンボール入り肉まんにダンボールが入っているかどうかを調べる方法

今流行りの? ダンボール肉まん

こんにちは、異物検査員です。

先日、肉まんに、ダンボールが入っているかどうかは分かるものですか? という
お問合せをいただきました。

ダンボール肉まん については多くの方がご存知のように、
ダンボール を カセイソーダ (水酸化ナトリウム) に浸してやわらかくしたあと、
包丁で細かく切り刻み、 肉4 : ダンボール6 という割合で調味料と共に混ぜて
まんじゅうの生地に包んで加熱したものです。

異物検査員は、テレビで最初の報道を見たとき、
ダンボールを 水酸化ナトリウム に浸して、やわらかいアルカリセルロースにさせているあたり、
なんとも危険な、しかし巧妙な方法だと思っていましたが  (・・・おっと失言 (^-^;) )、
どうやらヤラセによる誤報だったそうで・・・。

それが真実かそうでないかはともかくとして、
肉まんにダンボールが入っているかどうかを調べる方法としては、
どのようなものがあるのかを考えてみました。



考えてみた方法の数々

(1) pHの測定

ダンボールを 強アルカリ に浸しているので、全体のpH値はアルカリ側になっているはず。
でも、酸で中和していたり、水でよく洗浄していたりするとわからなさそうです。
この方法は、ダンボール混入の決め手には程遠い方法です。


(2) 成分分析

ダンボールってセルロースが主成分だし、強アルカリに浸しているので、恐らくアルカリセルロースになっていると思われるんですが、野菜の主成分もセルロースなので、ダンボールなのか野菜なのか判別しづらそう・・・。
うーん・・・成分の分析では分からなさそうです。


(3) 顕微鏡観察

ダンボールを光学顕微鏡で見ると、様々な色をした顔料成分 が認められるんです。
これは、再生紙なんかでもそう。印刷されたものを再度加工するからなんでしょうね。

だから、肉まんの具を顕微鏡で観察して、もし顔料の粒が見つかれば、ダンボールが入っているかどうかは分かりそうです。

ただ、強アルカリに浸した状態で、顔料に変化がないのか・・・それだけが心配です。

そこで、実際にダンボールを水酸化ナトリウムに漬けて、観察してみることにしました。



ダンボールを強アルカリに浸す実験
まずはダンボールを準備しました。

今回使用したダンボール ←今回使用したダンボール。

このダンボールの、比較的薄くてやわらかそうなところをあえて選び、
1つを蒸留水、もう1つを10Nの水酸化ナトリウムに浸して、一昼夜放置してみました。

上が蒸留水、下が水酸化ナトリウムに浸漬。 ←上が蒸留水、下が水酸化ナトリウムに浸漬。

ナトリウムの方が若干濃い色になっています。

でも、水酸化ナトリウムの濃度が10Nでよいのか? という疑問が残ったのと、
実際の肉まんは加熱されているので、やっぱ加熱しないとだめかな~? と思って、
電熱器の上でしばらく加熱してみました。
その時の温度は、肉まんの内部温度はきっと100度以上にはなってないだろうという推察から、
100度 (水が沸騰するまで) で行いました。

そして、顕微鏡観察です。



顕微鏡観察の結果
まずはコントロール (水に漬けたもの) の観察から。
ダンボールを水に浸漬後、加熱したもの ← ダンボールを水に浸漬後、加熱したもの。

パルプ繊維のほかに、赤や緑色の顔料片が見えますよね。 
ダンボールを顕微鏡で観察すると、こういうのがた~くさん見えるんですよ。

ダンボールを水酸化ナトリウムに浸漬後、加熱したもの ← ダンボールを水酸化ナトリウムに浸漬後、加熱したもの。

パルプ繊維 (ダンボールの繊維) は見えづらくなってて、膨潤しているようですけど、
赤や緑の顔料片はしっかりと見えますね。
色もそのままで変色してないし・・・。
ということは、肉まんの中でも、顔料片は残っている可能性が高いんじゃないかな。



この実験結果から、肉まんの中にダンボールが入っているかどうかは、
肉まんの具を顕微鏡で観察して、顔料の有無を確認すればできそうな感じです。

ただ、この実験はダンボールだけで行いましたけど、
実際の商品は肉や野菜なども含まれているので、観察するのは骨が折れそうです。
一番良いのはダンボール肉まんを作って調べてみることなんですけど、
その勇気はさすがにありませんでした、すみません・・・。

あと、ダンボールの量の問題もありますね。
テレビで報道された肉まんのように 6割近くもダンボールが入っていたら
顕微鏡で見つけられると思うんですけど、ほんの少しの量だと難しそうです。
顔料片をどうやって取り出すかが問題かな・・・。
顔料片って繊維に絡み付いているから浮遊もしてこないしなぁ・・・。
うーむ。

あ! それから、ダンボールや再生紙じゃない場合・・・これはおそらく至難の業です。
タンパク質の量とか食物繊維の量とかそういうので比較して、
この肉まん、タンパク質少ないね~、繊維多いね~ ということは言えるけれど、
だからって紙が入っているかどうかは分からないと思うんですが、いかがでしょう。
もし何か良い方法があったら、無知な異物検査員にメールで教えてくださいませ。。。



結論
なんとも中途半端ではございますが、実験の結論。
  1. 6割近くもダンボールが入っていたら、顔料片の有無を顕微鏡観察すれば、
    ダンボールの有無が分かりそうです。 (でも、観察には時間もかかりそうです)
  2. 少量のダンボールだと、顕微鏡観察では見つけられない可能性大です。
  3. 他の方法は今のところ思いつかないです。 すみません。。。




かたつむり 水酸化ナトリウムは劇薬です。危険ですから皆さんは真似しないでくださいね~。



水酸化ナトリウム
NaOH。 苛性ソーダ (カセイソーダ) とも呼ばれ、毒物及び劇物取締法により劇物に指定されています。
強アルカリはアミド結合を加水分解することができ、タンパク質を腐食させる力を持っています。
最近では、ご家庭でも自家製の石鹸作りなどに利用されるようですが、取り扱いには本当に気をつけてください。水酸化ナトリウムが手に付くとヌルヌルしますが、それは皮膚が溶けているということなので、手に付いたらすぐに多量の水で洗い流してくださいね。そのとき、強く擦ると皮膚がただれてしまうこともあるので、擦らずに洗い流すようにするといいでしょう。
また、目に入ったら失明する危険性も高い劇薬です。作業時にはゴーグルを用いるなど、絶対に目に入らないように気をつけてくださいね。





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