今流行りの? ダンボール肉まん
こんにちは、異物検査員です。
先日、肉まんに、ダンボールが入っているかどうかは分かるものですか? という
お問合せをいただきました。
ダンボール肉まん については多くの方がご存知のように、
ダンボール を カセイソーダ (水酸化ナトリウム) に浸してやわらかくしたあと、
包丁で細かく切り刻み、 肉4 : ダンボール6 という割合で調味料と共に混ぜて
まんじゅうの生地に包んで加熱したものです。
異物検査員は、テレビで最初の報道を見たとき、
ダンボールを 水酸化ナトリウム に浸して、やわらかいアルカリセルロースにさせているあたり、
なんとも危険な、しかし巧妙な方法だと思っていましたが (・・・おっと失言 (^-^;) )、
どうやらヤラセによる誤報だったそうで・・・。
それが真実かそうでないかはともかくとして、
肉まんにダンボールが入っているかどうかを調べる方法としては、
どのようなものがあるのかを考えてみました。
考えてみた方法の数々
(1) pHの測定
ダンボールを 強アルカリ に浸しているので、全体のpH値はアルカリ側になっているはず。
でも、酸で中和していたり、水でよく洗浄していたりするとわからなさそうです。
この方法は、ダンボール混入の決め手には程遠い方法です。
(2) 成分分析
ダンボールってセルロースが主成分だし、強アルカリに浸しているので、恐らくアルカリセルロースになっていると思われるんですが、野菜の主成分もセルロースなので、ダンボールなのか野菜なのか判別しづらそう・・・。
うーん・・・成分の分析では分からなさそうです。
(3) 顕微鏡観察
ダンボールを光学顕微鏡で見ると、様々な色をした顔料成分 が認められるんです。
これは、再生紙なんかでもそう。印刷されたものを再度加工するからなんでしょうね。
だから、肉まんの具を顕微鏡で観察して、もし顔料の粒が見つかれば、ダンボールが入っているかどうかは分かりそうです。
ただ、強アルカリに浸した状態で、顔料に変化がないのか・・・それだけが心配です。
そこで、実際にダンボールを水酸化ナトリウムに漬けて、観察してみることにしました。
ダンボールを強アルカリに浸す実験
まずはダンボールを準備しました。
←今回使用したダンボール。
このダンボールの、比較的薄くてやわらかそうなところをあえて選び、
1つを蒸留水、もう1つを10Nの水酸化ナトリウムに浸して、一昼夜放置してみました。
←上が蒸留水、下が水酸化ナトリウムに浸漬。
ナトリウムの方が若干濃い色になっています。
でも、水酸化ナトリウムの濃度が10Nでよいのか? という疑問が残ったのと、
実際の肉まんは加熱されているので、やっぱ加熱しないとだめかな~? と思って、
電熱器の上でしばらく加熱してみました。
その時の温度は、肉まんの内部温度はきっと100度以上にはなってないだろうという推察から、
100度 (水が沸騰するまで) で行いました。
そして、顕微鏡観察です。
顕微鏡観察の結果
まずはコントロール (水に漬けたもの) の観察から。
← ダンボールを水に浸漬後、加熱したもの。
パルプ繊維のほかに、赤や緑色の顔料片が見えますよね。
ダンボールを顕微鏡で観察すると、こういうのがた~くさん見えるんですよ。
← ダンボールを水酸化ナトリウムに浸漬後、加熱したもの。
パルプ繊維 (ダンボールの繊維) は見えづらくなってて、膨潤しているようですけど、
赤や緑の顔料片はしっかりと見えますね。
色もそのままで変色してないし・・・。
ということは、肉まんの中でも、顔料片は残っている可能性が高いんじゃないかな。
この実験結果から、肉まんの中にダンボールが入っているかどうかは、
肉まんの具を顕微鏡で観察して、顔料の有無を確認すればできそうな感じです。
ただ、この実験はダンボールだけで行いましたけど、
実際の商品は肉や野菜なども含まれているので、観察するのは骨が折れそうです。
一番良いのはダンボール肉まんを作って調べてみることなんですけど、
その勇気はさすがにありませんでした、すみません・・・。
あと、ダンボールの量の問題もありますね。
テレビで報道された肉まんのように 6割近くもダンボールが入っていたら
顕微鏡で見つけられると思うんですけど、ほんの少しの量だと難しそうです。
顔料片をどうやって取り出すかが問題かな・・・。
顔料片って繊維に絡み付いているから浮遊もしてこないしなぁ・・・。
うーむ。
あ! それから、ダンボールや再生紙じゃない場合・・・これはおそらく至難の業です。
タンパク質の量とか食物繊維の量とかそういうので比較して、
この肉まん、タンパク質少ないね~、繊維多いね~ ということは言えるけれど、
だからって紙が入っているかどうかは分からないと思うんですが、いかがでしょう。
もし何か良い方法があったら、無知な異物検査員にメールで教えてくださいませ。。。
結論
なんとも中途半端ではございますが、実験の結論。
- 6割近くもダンボールが入っていたら、顔料片の有無を顕微鏡観察すれば、
ダンボールの有無が分かりそうです。 (でも、観察には時間もかかりそうです)
- 少量のダンボールだと、顕微鏡観察では見つけられない可能性大です。
- 他の方法は今のところ思いつかないです。 すみません。。。
水酸化ナトリウムは劇薬です。危険ですから皆さんは真似しないでくださいね~。
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