| 誤飲異物による腸閉塞
 
こんにちは。 異物検査員です。
 今日は少し痛々しいお話・・・
 ペットの小腸から出てきた異物です。
 
  ←異物はコレ。 
 
 
 異物が発見されるまでの経緯
 ペットとして飼っているワンちゃんが、ある日突然元気が無くなり、
 食べては戻すの繰り返しになったのだそうです。
 飼い主の方がすぐに気付き、動物病院で多くの検査を受けたそうなのですが、
 血液検査の結果が日を追うごとに悪くなり・・・。
 
 でも、その一方で、レントゲン、エコ-、バリウムなどの検査では、
 ハッキリとはわからなかったのだそうです。
 
 原因がつかめないまま、このままではもしかしたら死んでしまうかもしれない、と、
 試験的に開腹手術を行ったところ、小腸から写真のような黒い異物が検出されたとのこと。
 
 
  ←異物の拡大写真。 
 異物の太さは1cm程度、長さは様々です。
 この異物は小腸に癒着していたため、小腸を6cmも切除したんだそうです。
 
 
 
 
 異物は何か?
 異物はとても硬くて、見た目は真っ黒。
 力を加えるとボロボロに崩れたことから、最初の印象は、
 何かの寄生虫、プラスチックや石や砂の塊、木片や木炭のように見えました。
 
 そこで、慎重に切片を作って、顕微鏡で確認したところ、
 異物から、丸みを帯びた植物細胞と維管束組織が観察されました。
 
 
  ←異物の顕微鏡写真。 
 このことから、異物は寄生虫とか、プラスチック類とか、石や砂などが集まったものじゃなくて、
 何かの植物片 と判明しました。
 
 
 
 
 何の植物か?
 異物を詳しく調べていくと、この植物、木や竹の組織の特徴を全然持っていなくて、
 木や竹、木が炭化した木炭などの植物ではないことがわかりました。
 
 そこで、わが社で集めている、植物のデータベースで調べたところ、
 異物の細胞の形は、なんと!
 
 カボチャなどの野菜のヘタ(硬い部分) に似ていることがわかりました。
 
 
  ←野菜のヘタの部分の顕微鏡写真。 
 ただ、異物は消化が進んでいたのかボロボロだったんで、
 詳しいデータは得られなかったんです。
 
 だから異物が野菜のヘタとは限らないんです。
 
 もともと、植物の細胞からだけでは、植物の種類を特定するのは難しいんですけど、
 今回も、野菜かどうかだけじゃなくて、おおよその植物の分類すらも分からなかったんです。
 
 でも、一番上の写真を見るとわかるように、
 もし異物が1本だったら、かなりの長さがありそうなんです。
 しかも、太さは1cm近くもありそうだし、太くて長くて硬い植物の可能性が高そうです。
 
 
 
 
 どこで食べてしまったのか?
 太くて長くて硬い植物・・・しかも、それが 「木」 じゃない、となると、
 ご家庭で食べてしまう可能性は非常に低いと思うんです。
 
 なぜなら、家庭内にある太くて長くて硬い植物 って、
 割り箸、菜箸、ザルの一部とかエンピツ・・・
 それらは、ほとんどが 「木」 や 「竹」 でできているものだからです。
 
 また、野菜の硬い部分に似ていた今回の異物ですが、
 野菜の硬い部分って、店頭で販売される前に短く切られていることがほとんどですよね。
 
 硬くて長くて太い部分がある野菜や果物って・・・うーん。
 七夕用に販売されている スイカのツル とか・・・?。
 それも最近じゃあまり見かけないし・・・。
 
 
 
 だから、この異物は、
 ご家庭内で口に入ったものではなく、外で食べてしまったと思われるんです。
 
 異物が何の植物かがわからないので、なんともいえないのですが、
 公園や広場、畑の近くなど、硬そうな植物 (色は黒じゃないかもしれません) には要注意です。
 可能性は低いけれど、八百屋や市場の近くでも、こういう植物があるかもしれません。
 
 
 
 でもこの飼い主さん、お散歩中にも気を配っていらっしゃいまして、
 口に入れたものを吐き出させるように、しっかりとトレーニングされていたのだそうです。
 そのため、今回の件はとてもショックだとか・・・。
 
 でも、早期発見されたことで、ワンちゃんが無事で本当に良かったです。
 
 
 
 
 
 
 
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